マダムがボランティアに行っている通信関係の博物館があります。その博物館は運営を募金で賄われていて、スタッフはほぼアメリカの大手通信会社勤務経験のある退職者のおじちゃん、おじいちゃん達。そして、まだ若いマダムは、その中でも未来ある若者(もう若くないが。笑)としてかなり重宝されています。
その博物館の館長的役割をするおじさんは、やはり大手通信会社に長年勤めていたドンさん。一見厳しそうな顔をしているけど、目の奥が温かいとても優しいおじさん。私は三回程しか会った事がなかったし、自分の父親に近い年齢の男性でしかもアメリカ人、何を話せば良いんだろう?と、ただニコニコする他ない私に、まるで自分の娘を見るかのように優しいまなざしでいつも微笑んでくれました。
ドンさんは、心臓病で何年か前に手術をしました。手術は成功し、しばらく食事療法などをした後、すっかり元気になって過ごしていましたが、去年の秋頃、今度は耳の付近にメラノーマが出来てその手術を受けたそうです。そして、先週の火曜日、マダムが聞いた事は、今度はお腹に腫瘍が出来て摘出手術をしなければいけないとの事。ドンさんは元々寡黙な人で、自分語りをしない、苦手とする人だそうで、腫瘍の詳細についてもマダムは良く聞けなかったそうです。
そして昨日、その腫瘍摘出手術がありました。ドンさんも詳しく語らず、またマダムも話べた(主語のない典型的おばちゃん的な話し方をするので、いつもマダムの話はよく分からないです)なので、こっちからあれこれ質問してみると、「腎臓を片方摘出しないといけないみたいだよ」と。私がマダムから聞いた話で想像したのは、お腹の中の脂肪の中に腫瘍が出来て、それを取り除く。キャンサーじゃなくてチューマーと称していたので腫瘍、良性か悪性かは分からないという事で、お腹の脂肪にも腫瘍って出来るんだ?悪性のガンでなかったら摘出すれば大丈夫なんだよね?そんな大変な手術じゃないんでしょう?と、気軽に考えていました。でも腎臓摘出って何?一体なんだろう??それから入院日数は10日程とも聞いていました。
しかし、今朝、博物館の別のおじさんから連絡があってドンおじさんの術後の容態が悪いと。それからお昼頃、マダムに別件で連絡すると、結局ドンおじさんは助からなかったと…。今週の火曜日、マダムはいつものように博物館へ行って、ドンおじさんと会って色々話して、その時のドンおじさんは翌日に控えた手術で緊張しているようだったけどいつものおじさんで、でも、手術した翌日にこんな突然亡くなるなんて恐らく誰にも想像できなかったと思います。アメリカで私が会った事のある人の初めての死です。しかも、私は上記のように軽く考えていたので、余計あの優しいドンおじさんを思い出すと目からしょっぱい汁が溢れ出てきます。
博物館のおじさん、おじいちゃん達は悲嘆にくれています。それと同時に今後の博物館についても考えないといけないようです。ドンおじさんがいるから博物館がちゃんと回っていたようなものだったので、これからどうなるか分からないものの、取りあえずはマダムが頑張らないといけないようです。マダムは昨晩夢を見たそうです。ドンおじさんが出て来て、でも何故か若い声で「博物館に沢山人が来るようにしてくれ」と、言われたそうです。
ドンおじさん、まだ死ぬには若すぎです。しかも博物館の後継者の一人としてまだマダムは一人前ではないし、まだまだ教わる事も沢山あったはず!なのになのに…。でも、晩年は病気が度重なって辛い事も多かったと思います。今は肉体的苦痛から解放されて安らかにしているかと思うと、ドンおじさんにキツい事も言えないですね…。ドンおじさん、どうか安らかに。